リール大学での海外基礎配属を終えて

赤松 優

 私は海外基礎配属で約二か月間、フランスのリールにあるリール大学で基礎配属研究をさせていただきました。このリールでの生活では、基礎研究に関わる技術や知識、考え方はもちろん日本での生活ではできないであろう経験からたくさんのことを学ぶことが出来ました。今回の留学で学べたこと?感じられたことをここで共有し、留学を考えている皆さんの参考になれば幸いです。

 ラボでは、リール大学で研究をしていらっしゃる内村先生と、一緒にフランスへ行かせていただいた西辻先生のお二人に教えていただきながら、神経変性疾患におけるmicrogliaについて研究しました。初めは、この研究をするに至った背景や研究をする上で必要となる知識の理解から始まりました。この過程で、英語での論文の読み方も学ぶことが出来ました。今まで研究ということに取り組んだことがない私にとって、ほとんど何も知らない状態から今までの研究の流れを理解することはとても大変でしたが、先生方に教えていただくことで正確に理解した状態で今回の研究をスタートさせられたと思います。今回の実験では、Cryostatで凍結標本を作成し、免疫染色を行って観察するということを繰り返し行いました。同じ手順で何度も実験をしたことで実験手技は確実に身に付けることが出来ました。また、思うような結果が得られなかったときになぜそのような結果になったのか、改善するためにはどうしたらよいのかを考える時間をいただけたので自分で結果を考察することが出来ました。このような、実験の結果を考察しそこからどのように次の実験につなげるのかを考えなければいけなという点が最も難しいと感じる瞬間でしたが、研究することの意味を感じられる時間でもありました。

 今回は私にとって初めての海外ということもあり、言葉の面にはとても不安がありました。特に、研究はすること自体がほぼ初めてであり英語で学ぶということには不安が大きかったため、今回は内村先生と西辻先生の共同研究に参加させていただくという形での留学に決めました。実際に実験に関わることは日本語で教えていただけたのでスムーズに学ぶことが出来ました。そしてもちろん実験以外の時間では外国語に触れることになります。ラボにいるフランス人との会話はほとんど英語でのやり取りでしたが、簡単な挨拶はフランス語で交わしていました。1年生でフランス語を履修していたためフランス語をもう一度学びそして実際に使うことはとても楽しかったです。しかし、やはりフランス人同士のフランス語での会話にはついていけませんでした。多言語を話せることが当たり前という人もいて、日本語しかうまく使いこなせないことに悔しさを感じました。この悔しさは、多言語をマスターしたいという新たなモチベーションになっています。研究についてもしっかりと勉強でき、多言語にも触れられるという環境はとても学びのある刺激的な環境でした。

 休日は、リールの市街地を散策したりパリやブリュッセルなどの観光地にも行かせていただきました。街並みや食事、交通事情、ストライキなど日本との違いをたくさん感じられました。特にフランスは移民なども多く街中では様々な人種の方に出会うことが出来ました(ラボにもレバノン?イタリア?メキシコの方がいました)。様々な国のフードを食べたり、ラボでも様々な国の人と会話したりすることで日本との違いや共通点を知り、他国の文化にも興味を持つことが出来ました。

 基礎配属の期間は約二か月ありますが、いつもと変わらない環境で仲の良い友人と楽しんで研究するのもよいが、留学することを選択し一人で異国の地で医学を学んだという経験は忘れられないものとなりました。今まで興味があっても飛び込めないことも多かったですが、今回の挑戦で新しいことにチャレンジすることの楽しさと周りの力を借りることで何事も乗り越えられるということを感じました。今回の留学でこんな私を受け入れてくださった内村先生、留学前から留学後までサポートしてくださった西辻先生、国際センターの林さんに心から感謝申し上げます。今回の留学で得た経験やモチベーションを大切に今後の大学生活やその後にも全力で取り組んでいきたいと思います。

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